医療費のしくみ
●保険料が医療費として支払われるまで
医療費の原資は保険料です。集められた保険料はまず保険者である健康保険組合などでプールされます。
被保険者・被扶養者が患者として受診する際、まず保険証により医療給付がなされる保険者を確認します。保険証が提示されないと保険者を確認することができないため、全額自己負担になります。
医師は患者の病状に応じて診察を行い、病院などの各保険医療機関はその診療内容に応じて医療費を算出します。自己負担分は小学生~69歳であれば基本的に医療費の3割です。診療内容はレセプトと呼ばれる診療報酬明細書に記載されて審査支払機関へ送られ、その適正がチェックされます。審査を通ったレセプトは保険者ごとにまとめられ、その請求額に基づいて、給付すべき医療費が各病院、診療所などへ支払われます。
●保険診療とは
一般的に医療行為というと、法令により定められている保険診療を指します。そして、登録されている医師は保険医、登録されている病院などは保険医療機関といいます。これらに該当しない医療は社会保険対象外となり自費診療です。
また、保険診療は診療報酬点数として、その内容と金額が細かく規定されています。初診料・再診料、入院料、検査、画像診断、投薬、注射などに分類され、その診療行為一つ一つに点数が決められています。1点は医療費として10円に換算されます。
診療報酬の具体的な点数は、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会で審議されて決められます。
医師は患者の状態からどのように治療するかの裁量を任されています。患者が受けた診療内容を積算することにより医療費が算出されます。これを出来高払い制といいます。近年は、治療方法が確定している一部の疾病において、医療費を一律にする包括払い制が広がっています。
●保険証の役割
医師側からみた保険証は、医療費の残り7割分をどこに請求するかを確認するためのものです。自分の患者がどこの保険者に属すかは、いつでも変わりうるものですから、本来は診察のたびにチェックすべきものですが、便宜上、確認するのは毎月最初の1回でよいとされています。保険証に記載された保険者番号と被保険者記号・番号により、医療機関は医療費の請求先と患者の保険資格を確認することができるのです。
●レセプト~診療報酬明細書
各保険医療機関は、患者ごとの診療内容を暦月単位で集計し、社会保険診療報酬点数により医療費を算出します。そして、健康保険、国民健康保険といった制度ごとや、都道府県ごとにまとめて、審査支払機関へ送付します。レセプトは保険医療機関・保険医にとって、審査支払機関への医療費の請求書でもあります。
●審査支払機関~社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会
社会保険診療報酬支払基金は健康保険、国民健康保険団体連合会は国民健康保険の医療費を主に扱っています。
審査支払機関はレセプトに記載された診療内容を審査し、その医療給付金額を各保険者から徴収して、それぞれの保険医療機関・保険医に支払います。また、各保険者が代理徴収した介護保険料を取りまとめるなど、各種社会保険制度間に関して銀行のような役割も担っています。
2022.04.01 (保坂)