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Basic knowledge 労災保険 死亡・遺族に関する給付

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労災保険 死亡・遺族に関する給付

●遺族補償給付と遺族給付

業務上または通勤途上によるケガ・病気によって死亡した場合には、労働者の遺族に「遺族(補償)給付」が年金または一時金で支給されます。遺族補償年金の額は、遺族の人数によって年金給付基礎日額の153日~245日分となっています。

●遺族(補償)年金の遺族

【表1 遺族(補償)年金の受給権者となる遺族の順位】

順 位 遺 族
1 妻または60歳以上もしくは一定障害の夫
2 18歳年度末までの子、または一定障害の子
3 60歳以上または一定障害の父母
4 18歳年度末までの孫、または一定障害の孫
5 60歳以上または一定障害の祖父母
6 18歳年度末までの兄弟姉妹、
もしくは60歳以上または一定障害の兄弟姉妹
7 55~59歳の夫(60歳まで若年停止)
8 55~59歳の父母(60歳まで若年停止)
9 55~59歳の祖父母(60歳まで若年停止)
10 55~59歳の兄弟姉妹(60歳まで若年停止)

遺族(補償)年金を受給できる遺族の範囲は、労働者の死亡当時、その者の収入によって生計を維持されていた「配偶者、子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹」です。厚生年金保険の遺族年金の範囲と違い、兄弟姉妹が加わっており、遺族の範囲が厚生年金保険よりも広くなっています。

また、年金は、遺族の対象者全員に支給されるのではなく、遺族の順位が表1のように決まっており、受給資格者の中で先の順位者にだけ支給されます。例えば、会社員の夫が通勤災害で死亡し、その遺族が「妻」「18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある(18歳年度末までの)子」「60歳以上の父母」の場合、妻が第1順位者ですので、妻が年金を受給する遺族になります。その後、年金を受給していた妻が死亡した場合には、次順位である「18歳年度末までの子」が、18歳に達する日以後の最初の3月31日まで年金を受給することができます。

このように、受給資格者がいる場合に、年金の受給権が転移していくことを転給といいます。これは、労災保険の遺族(補償)年金の独特のしくみで、国民年金の遺族基礎年金も、厚生年金保険の遺族厚生年金にも、転給という制度はありません。

順位が7~10位の若年停止に該当する場合は、60歳に達しても順位が繰り上がるのではなく、受給資格のみ引継ぎ、先順位者がすべて失権した場合に受給権を得ます。

●遺族(補償)年金の額

【表2 遺族(補償)年金の支給額】

遺 族 数 年 金 額
(年金給付基礎日額の)
1人 153日分
1人
(55歳以上または障害状態の妻)
175日分
2人 201日分
3人 223日分
4人以上 245日分

遺族(補償)年金の額は、遺族の人数によって年金給付基礎日額の「1人=153日」~「4人以上=245日分」となっています。(表2)遺族の数は、年金の受給権者および受給権者と生計を同じくしている受給資格者の人数の合計です。

例えば、遺族が妻と18歳年度末までの子で、2人という場合の年金額は、年金給付基礎日額の201日分が支給されます。年金給付基礎日額とは、原則として災害当日前3カ月間の平均賃金日額です。この例ですと、年金給付基礎日額が1万円の場合、201万円が年金額となります。

ただし、同一の事由により、労災保険と、国民年金の遺族基礎年金・寡婦年金および厚生年金保険の遺族厚生年金を同時に受給できる場合には、労災保険の年金が減額調整されます。

また、原則支給されるのは年金となっていますが、年金の受給対象となる遺族がいない場合や、年金の受給権者が最後順位者まですべて失権した場合で、支給された年金の合計額が給付基礎日額の1,000日分に満たないときは、一時金として支給されます。また、このほか遺族(補償)年金を受ける者に「遺族特別支給金」「遺族特別年金または遺族特別一時金」が支給されます。

●遺族(補償)年金前払一時金

遺族の安定した生活のため、年金の前払い制度があります。年金給付基礎日額の200、400、600、800、1000日分から選択できます。ただし、前払一時金の分だけ年金給付が停止されます。

●葬祭料

業務上災害により死亡した場合あるいは業務上の傷病が悪化して死亡した場合、葬祭を行う遺族などに対して「葬祭料」が支給されます。支給金額は、315,000円+給付基礎日額30日分または給付基礎日額60日分のいずれか高いほうです。

2022.04.01 (保坂)

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