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Web magazine“Present” 広報誌「Present」Web版

2025年12月号掲載

Lesson.9 ふるさと納税を始めたい20代世帯 —— その2

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ふるさと納税の上手な活用方法を提案した前回に続き、今回は制度を利用する上での注意点を考えます。

試算した控除限度額より少額で行う

ふるさと納税も一種の寄附ゆえ、その額に際限はありません。寄附が高額ならそれ相応の返礼品等が貰えるでしょう。

しかし、適正額を超えた寄附をすると、超過分は全額自己負担、貰った返礼品は高額な買い物をしているようなものです。

ゆえに実質的な出費を2000円に留めるためにも適正な寄附金額を逆算する必要があります。

そこで便利なのが、総務省「ふるさと納税ポータルサイト」や各種ふるさと納税仲介サイトの「控除限度額」のシミュレーションツールです。これを利用すれば簡単に寄附金の目安を知ることができます。

ただし、実際の納税額が計算されるプロセスは複雑です。多くのサイトでは収入と家族構成等から納税額を概算しますが、あくまでもこれは目安に過ぎません。

例えば、自己負担のiDeCoの拠出金や生命保険料等に係る「所得控除額」は個々で異なります。また、算出税額から差し引ける「税額控除」があれば、最終的な納税額は概算より少なくなります〔図1〕

各サイトのシミュレーションに、こうした個別事情をも加えて考慮しなければ、適正寄附額を超える危惧もあるのです。

また、所得税は概ね寄附する年の年末、住民税はその翌年の5~6月にならないと最終的な納税額は通知されません。つまり、当年におけるふるさと納税の控除限度額を寄附のタイミングで把握するのは難しく、往々に昨年の源泉徴収票等の資料を元に、「これくらいだろう」という目安で行うことになります。

ふるさと納税の利点は、これを続ける限り受けられます。目いっぱいの恩恵を受けたくなるのが人情ですが、オーバー寄附を避けるためにも、試算した控除限度額よりも抑えた額で、毎年継続して享受するのが無難といえるでしょう。

確定申告をすると、ワンストップ特例申請が無効になってしまう

ふるさと納税で、税額の還付・控除を受けるためには、その申請を行う必要があります。その方法は2つ〔図2〕

このうち、おススメは、「ワンストップ特例申請」。とにかく、手続きに係る手間が少なく、ふるさと納税仲介サイト経由でも行えます。基本的には、この申請だけで必要な手続きは完結してくれます。

ところが、「ワンストップ特例申請」は、「確定申告」をすると、その申請自体が無効になってしまう点に注意が必要です。

例えば、住宅ローン控除を受ける際の住宅購入年、配当控除を申告する場合のほか、高額の医療費負担が生じた年に医療費控除を受けたい時には確定申告をする必要があります。

このような場合は、ふるさと納税のもう1つの申請方法である「確定申告」による申請手続きで、改めて申請を行わなくてはなりません。

なお、控除適用年から5年間は遡って還付申告できますので、ご安心ください。

できれば、確認も忘れずに

ふるさと納税の恩恵を改めて実感する機会は多くはありません。制度を続けるモチベーションのためにも、あるいはオーバー寄附の状態なら、その修正のためにも、適宜、その効果を検証・確認することも大切です。

具体的に、口座に振り込まれる所得税の還付金と寄附翌年に受け取る「住民税の決定通知書」に記載の税額控除欄(または摘要欄の記載額)との合計額(ワンストップ特例申請の場合は、住民税の決定通知書の記載額)が、「寄附金額 - 2000円」と同額かどうかをチェックすること。もし、合致していないのなら、早めの修正が必要です。

ふるさと納税は、納税者であれば、是非とも利用したい制度です。注意すべき点は踏まえつつ、上手に家計のために活用しましょう。

PROFILE

井上 信一(いのうえ しんいち)
価値生活研究室 代表
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士

FPとしては、個人向けFP相談、法人・個人向けのセミナー・講義、労組・福祉会等の発行する福利厚生冊子執筆のほか、企業のリスクマネジメント・福利厚生設計支援、各種コラム執筆や書籍監修にも多数従事。
また、進展する超高齢社会を前に、「介護の不安を軽くするための暮らしと住まい」を支援すべく数多くの高齢者施設の見学会や情報発信等の企画も開催。成年後見人として、地域社会への貢献活動も行っている。

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