青森県 板柳町立板柳中学校
二学年 成田 侑経(なりた うきょう)
僕の母は、高校を卒業してからの十数年間、郵便局で働いていたようだが、僕が二歳の時に、憧れの職業に就きたいという夢が芽生えたそうだ。そして悩んだ結果、職場を退職し、その退職金を元手に大学や大学院に進学していた。現在は、公認心理師という資格で、障がいを持つ子ども達やお母さんを支える発達支援の業務に携わっており、母は望んでいた仕事ができて幸せだと、よく嬉しそうに話している。
今回僕は、生命保険についての知識がないので「どういうものか教えてほしい。」と母に尋ねると、母は僕が生まれた時に加入した、学資準備のための保険の保険証券を出して細かく説明をしてくれた。
「この保険は、決められた保険料の払込みをすることで、将来必要となる教育資金を計画的に積み立てて一時金や満期保険金として受け取ることが可能となるから、子育て世代の人々にとってはとても大切な保険なの。」
と、いつもはふざけた話ばかりする母が意外にも真剣な表情で話してくれた。
そして僕が少し驚いたのは、保険料の払込免除という制度についてだ。保険料を支払う〝契約者〟を父と設定した場合、父に万が一の出来事、例えば事故や病気で亡くなってしまうようなことが起きた時は、それ以降の保険料の払込みを一切しなくても、学資準備のための保険の満期保険金を受け取ることができる、というものだ。
一家の大黒柱である父に、もしものことが起こったら……。確かに考えてみると、日々の生活費も大変になるだろうし、保険料の払込みだって難しくなるかもしれない。急な出費をまかなうための〝貯蓄〟も当然大切だが、学資準備のための保険に加入して教育資金を着実に準備していくことは、家族みんなの〝安心〟にもつながるのだと、僕は感じた。
そして他の生命保険の仕組みについても説明を受けたが、母の話の熱量から、学資準備のための保険については少し重要度が異なるような印象を持った。
母は母子家庭で育ち、経済的なゆとりがなく、学資準備のための保険にも加入してもらえていなかったそうだ。「高校時代の友人達が大学へ進学する中、就職する選択肢しかなかった悔しさや無念さを実はずっと抱えて生きていたのかもしれない。」と話し、少し涙ぐみ始めたので、僕は正直困惑した。
しかし、郵便局員となった母が生命保険の仕組みに触れて、特に学資準備のための保険の重要さを理解してからは、窓口に訪れる小さなお子さん連れの方や妊婦のお客さんに対して、その必要性をできるだけわかりやすく伝え続けた。契約が決まったお客さんや、満期を迎えたお客さんとの会話は今でもとても思い出深いという。
そうして母はいつか自分が親となった時、子どもにとって将来の夢や叶えたい目標を経済的にも精神的にも全力で応援できる状態でいたい、と考えるようになり、僕が生まれる日を心待ちにして、学資準備のための保険に加入したんだよ、と話してくれた。
母からは今まで聞いたことがない様々な話を聞いて、実は自分がとても恵まれた環境に生まれ育っていることに改めて気づかされた。そして、僕が物心ついた時から試験勉強や研究に追われて、泣いたり笑ったり忙しかった母の大切にしている思いにも初めて触れたような気がした。
僕には現在、「これだ」と思える明確な夢や目標が見つかっていない。しかし僕も高校を卒業する頃には将来の方向性を見出し、いつか母のように人生を捧げたいと思えるような職業に出会えたらいいな、と思う。将来のビジョンが無い僕の心が目覚めたその時、学資準備のための保険という〝安心〟のお守りがあることは、夢へ向かう僕の背中を押してくれるのではないかと考えている。