奈良県 三郷町立三郷中学校
三学年 川嶋 夕陽(かわしま ゆうひ)
生命保険。時々テレビで耳にすることはあっても、十五歳の私にとっては全く関係のない言葉だと思っていました。
親に保険の話を聞くまでは。
コマーシャルのナレーション曰く、病気など万が一に備えて入っておくもので、何かあれば保険金が支払われるとのこと。
でも義務じゃないので、加入したい人だけがお金を払って入る保険。
あまり裕福ではない我が家には保険に入る余裕などなく、私には縁がないと思っていました。
「入っているよ、保険。」
私は親の返事に驚きました。家では「お金がない」という言葉をよく耳にし、度々説得のためにこの言葉を浴びせかけられる私は、親に食って掛かりました。
「余裕がない家がなぜ保険に入っているの、おかしくない?」と。
それに対し親は、
「余裕がないからこそ、余裕を持つために入っている」と、まるで禅問答のように、意味不明な答えを返してきました。
なぜ保険に入ったのか、改めて親に聞くと親の友人の話をしてくれました。
その友人は健康に自信がある人。就職してすぐ、職場の強い勧めで保険に入ることになり、何で健康な俺が保険に……と愚痴っていたとのこと。
ところが数年後、突然病に倒れ、結果として障碍者になってしまったのでした。これまで通りの生活が難しくなって絶望した時、立ち直る契機をくれたのが、嫌々加入させられたあの保険でした。
「お金が入ってきても、前の生活は戻らない。でも、やれることは格段に増える。そう気付けた時、将来に希望が持てて、また頑張ろうと思えた。これって大きいよ。」
本人から話を聞いた親は、本当の意味で保険の意義に気が付いた、とのことでした。
そして今年、その時加入した兄の学資準備のための保険が十八歳で満期を迎えたとのこと。
学資準備のための保険は親に万が一のことがあったとしても、契約した満期保険金が支払われる保険です。
親曰く
「この子が大きくなった時、たとえどんな状況だったとしても進路ぐらいは自由に選ばせてやりたい。この想いは保険が必ず果たしてくれる。だから安心して、頑張って払い続けてきた。今、その十数年前の想いを子供にちゃんと渡せて良かった。あまり裕福ではない家にとっては、特にね」と。
少し誇らしげに伝えられた時、私は兄が羨ましくなりました。
すると何かを察した親は続けます。
「あなたの分もあるよ。満期は三年後だけどね。」
親は言います。
「元気だったらお金の余裕はそこまで必要ない。そこで保険なら、万が一の場合にはそれを家族に残せるという〝心の余裕〟が得られる。不完全かもしれないが将来に希望を残してやれる。だから保険に入っているんだよ」と。
聞けば、他の保険にも加入して病気に備え、少ないですが万が一の保障もあるようです。
余裕のない生活の中でも保険料を支払い続けていたこと。親の私たちに対する深い愛情を知って、感謝が心からあふれ出して止まりませんでした。
今回、私には縁がないと思っていた保険が実は、私の家族の人生を守り続けていたことを知りました。
心の余裕、将来への希望、蓄積する愛情。
長い時間をかけて働き続ける保険は決して〝万が一の時にお金が支払われる〟だけのものではありませんでした。
そして私は、保険を通じて親の想いを知り、『進路を真剣に考えよう』と思うようになりました。
今回のことで保険に興味が湧き、調べると、死亡、医療、貯蓄に備えた保険を様々に組み合わせ、本当に多くの立場の人を支えていることが分かりました。
ただ、沢山ありすぎて、そして難しすぎて、正直私にはどれがいいのかよく分かりませんでした。
でも一つだけ決めていることがあります。それは、いつか自分に子供ができたら保険に入ることです。
なぜなら大切な想いも、保険なら、時間を飛び越えて確実に伝えてくれるだろうから。
親がそうしてくれたように。