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Web magazine“Present” 広報誌「Present」Web版

2022年5月号掲載

任意継続か国保か —— 退職後の医療保険

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近く65歳になり、長年勤めてきた会社を退職します。退職後も現在加入している健康保険に引き続き2年間は加入できると聞きました。国民健康保険に入るという選択肢もあるとのことですが、どちらのほうがいいのでしょうか。

どちらが保険料が安いかを調べて、安いほうに加入するのが現実的な対応といえます。健康保険の任意継続被保険者の保険料については2022年1月に法改正があり、従来より高くなっているケースもありますので注意が必要です。

全額本人負担になるが……

ご質問にあるとおり、退職後も2年間に限り、引き続き退職前に加入していた健康保険に加入することができます。これを「任意継続」と呼んでいます。会社員の健康保険の保険料は、本人と会社が半分ずつ負担しています(健康保険組合によっては会社負担分のほうが少し多いところもあります)。任意継続被保険者になった場合は、すでに会社を退職していますから、会社の保険料負担はなく、全額が本人負担になります。

そうすると、保険料が現役時代の倍になるのか、というと必ずしもそうではありません。任意継続被保険者の保険料は、原則として、①その人の退職時の標準報酬月額、②加入している健康保険の全被保険者の平均の標準報酬月額、のいずれか小さいほうを基に算出されることになっているからです。

標準報酬月額とは、毎月の給与を一定の幅ごとに区切られた切りのいい数字に置き換えたものです。たとえば、給与額が29万円以上31万円未満の場合は、30万円が標準報酬月額となり、この30万円に保険料率をかけて保険料が決まります。標準報酬月額は原則として毎年4~6月の給与の平均により決定し、毎年見直されます。

任意継続のほうが安い理由

さて、定年などで退職した場合、多くの人は任意継続被保険者を選択しています。というのは、国民健康保険に加入するよりも保険料が安く済むケースが多いからです。

国民健康保険の保険料は前年の所得等に応じて決まります。日本では多くの会社は年功序列型賃金制度であり、退職前は給与が高額になっています。したがって、退職直後の国民健康保険の保険料は高くなりがちです。一方で、健康保険の任意継続被保険者の保険料は前述の①と②の小さいほうを基に算出されますので、退職時の給与が高い場合、①よりも②のほうが低くなりますから、②により算出された保険料は現役時代よりも安くなる、ということになります(ただし、全額本人負担になるので実質的な負担は低くなるとは限りません)。というわけで、退職直後は任意継続被保険者になったほうが保険料は安く済むことが多いのです。

ただし、法改正により2022年1月以降、健康保険組合は各組合の判断により、①より②のほうが低い場合であっても、①を基に任意加入被保険者の保険料を算定することができることになりました。実際には、すべての健康保険組合がそのようにしているわけではなく、従来どおり、①、②の低いほうを保険料算定の基礎としているところも少なくありません。また、この規定は健康保険組合に限ったもので、協会けんぽでは従来どおりの取扱いとなっています。

こうした点にも注意して、あらかじめ任意継続被保険者、国民健康保険のそれぞれの保険料を調べ、比較してみるといいでしょう(国民健康保険の保険料は市区町村役場に行けば教えてくれますし、ウェブサイトにシミュレートできる機能を掲載しているところもあります)。

Profile

武田祐介

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
ファイナンシャル・プランナーの教育研修、教材作成、書籍編集の業務に長く従事し、2008年独立。武田祐介社会保険労務士事務所所長。生命保険各社で年金やFP受験対策の研修、セミナーの講師を務めている。

公式HP https://www.officetakeda.jp/

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