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Web magazine“Present” 広報誌「Present」Web版

2024年1月号掲載

65歳になる直前に退職すれば……

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64歳の会社員(男性)です。学校を卒業後に就職した会社で、60歳定年のあとも引き続き働いています。再雇用による勤務は65歳になるまで(65歳になった月の月末まで)できますが、64歳になり年金も支給されるようになったので65歳を待たずに退職してもいいと考えるようになりました。先日、雇用保険の失業給付は、65歳になる前に辞めたほうが多く支給されるという話を聞きました。65歳前と65歳後の退職では失業給付はどう違うのでしょうか。

65歳になる前に退職した場合は、基本手当が150日間支給されるのに対し、65歳になってから辞めた場合は50日分の一時金となります。

150日分か50日分か

通常、失業給付、失業手当などと呼ばれている雇用保険の給付は正確には「基本手当」といいます。離職した場合に、一定の要件の下、支給されるものです。基本手当は勤務中の賃金に基づき計算された基本手当日額が勤務年数などに応じた日数分、給付されます。勤務年数が20年以上で自己都合や定年で退職した場合は150日です(4週間ごとに支給されます)。

ただし、この基本手当の対象は65歳未満で退職した場合に限られます。65歳以上で退職した場合は、基本手当が支給されない代わりに高年齢求職者給付金の支給対象になります。高年齢求職者給付金は、勤務年数が1年以上の場合、基本手当日額の50日分が一時金で支給されます。

このように、雇用保険の離職に対する給付は65歳前後で取扱いが分かれています。一方、雇用保険への加入については、年齢の上限はありません。したがって、65歳以上であっても、週20時間以上の勤務などの条件を満たせば、何歳であっても被保険者になります。仮に65歳以上で再就職し、雇用保険に加入した場合は、高年齢求職者給付金を再度受け取ることもできます(ただし、一度受け取ったあとに再就職した場合は最低6ヵ月以上の勤務期間がなければ支給対象になりません)。

年金との供給の扱いも異なる

ところで、相談者は64歳から年金を受給しているとのことですが、老齢厚生年金と基本手当の併給調整についても注意が必要です。相談者が現在受け取っている年金は「特別支給の老齢厚生年金」といわれるものです。

これは老齢厚生年金の支給開始年齢の60歳から65歳への引上げに伴い、経過措置として60代前半に支給されているものです。その支給開始年齢は生年月日により異なり、1959年4月2日から1961年4月1日の間に生まれた男性(2023年4月1日から2025年3月31日の間に64歳に達する男性)は64歳から支給されます。

この「特別支給の老齢厚生年金」は、基本手当が支給されている月は支給されません。すなわち、相談者がたとえば64歳3ヵ月で退職して基本手当を受け取ると、その間は年金が支給停止されます。

これに対して、65歳以後に受け取る老齢厚生年金は、基本手当との調整はなく、両方を受け取ることができます。そこで、65歳になる直前に退職すれば、基本手当が支給されますし、実際に基本手当を受け取るのは65歳以降になるので、「特別支給の老齢厚生年金」は支給停止されることはなく、65歳以降の老齢厚生年金を基本手当と同時に受け取ることができます。

ということで、雇用保険や年金の給付を考えると、65歳になってからではなく、65歳になる直前に退職する、というのが魅力的な選択肢となります。

Profile

武田祐介

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
ファイナンシャル・プランナーの教育研修、教材作成、書籍編集の業務に長く従事し、2008年独立。武田祐介社会保険労務士事務所所長。生命保険各社で年金やFP受験対策の研修、セミナーの講師を務めている。

公式HP https://www.officetakeda.jp/

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