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Web magazine“Present” 広報誌「Present」Web版

2022年10月号掲載

遺族年金が支給されない?

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60代後半の女性です。先日、同年代の友人の夫が死亡しました。友人は遺族年金が支給されると思っていたそうですが、年金事務所に行ったところ、友人の場合は支給されないといわれたとのことです。ちなみに、友人の夫は70代で、亡くなるまで老齢年金を受給していたとのことです。老齢年金を受け取っていた夫が亡くなって、妻が遺族年金をもらえないということがあるのでしょうか?

稀なケースとは思われますが、ありえます。老齢年金と遺族年金の受給要件は同一ではなく、老齢年金受給中の人が亡くなっても遺族年金が必ず支給されるわけではありません。

厚生年金保険の加入歴がなければ……

質問者の友人のケースは詳細がわからないので、なぜ遺族年金が受給できないのか、確定的なことはいえませんが、一般的に、老齢年金受給者である夫が死亡して、妻に遺族年金が支給されないケースとして、以下のようなことが考えられます。友人の場合もこのいずれかに当てはまっていたものと考えられます。

①夫が厚生年金保険に加入したことがない
遺族年金も、老齢年金同様2階建てになっていて、国民年金から支給される遺族基礎年金と、厚生年金保険から支給される遺族厚生年金があります。このうち、遺族厚生年金は、厚生年金保険の加入者または過去に厚生年金保険に加入していた人が死亡した場合が対象になります。したがって、亡くなった人が厚生年金保険に加入したことがなければ、そもそも支給されることはありません。たとえば、一度も会社勤めをしたことがなく、ずっと自営業者だった場合などがこれに該当します。

一方、遺族基礎年金は18歳の誕生日のあとの最初の年度末(3月31日)までの間にある子(ただし一定の障害者の場合は満20歳未満の子)がいなければ、支給されることはありません。したがって、夫の死亡時に、18歳到達年度末までの子(一般には高校生までの子)がなく、夫が厚生年金保険に加入したことがなければ、遺族年金は支給されません。

老齢年金は10年、遺族年金は25年

②夫の年金の加入期間が25年未満である
すでに公的年金の被保険者ではない人が死亡した場合、遺族年金を受給するためには、亡くなった人の公的年金の加入期間が25年以上であることが必要です。この25年は、国民年金の第1号被保険者期間(保険料未納期間を除く)と第3号被保険者間、厚生年金保険の被保険者期間などの合計で判断されます。自営業者で国民年金の第1号被保険者期間があり、その間に保険料を払っていない期間が長くある場合などは、この25年要件を満たさず、遺族年金が支給されないことになります。

ちなみに、老齢年金はこの加入期間が10年以上あれば支給されますので、老齢年金の受給者であっても、加入期間が25年未満の人が亡くなった場合は、遺族年金は支給されません。なお、公的年金の被保険者である間に死亡した場合は、加入期間が25年未満であっても(他の要件を満たせば)支給されます。

以上のほか、③残された妻の年収が850万円以上の場合、遺族基礎年金も遺族厚生年金も支給されません。また、④残された妻がすでに老齢厚生年金を受給していて、その額が夫の死亡による遺族厚生年金の額よりも多い場合は、遺族厚生年金は支給されません。もっとも、この③と④の場合は、遺された妻に遺族年金の額を超える収入があることになり、その後の生活に困る可能性は小さいと考えられます。

Profile

武田祐介

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
ファイナンシャル・プランナーの教育研修、教材作成、書籍編集の業務に長く従事し、2008年独立。武田祐介社会保険労務士事務所所長。生命保険各社で年金やFP受験対策の研修、セミナーの講師を務めている。

公式HP https://www.officetakeda.jp/

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