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Web magazine“Present” 広報誌「Present」Web版

2023年3月号掲載

30歳 —— 遺族年金のもう一つの境目

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夫が死亡した場合に妻が受け取る遺族厚生年金は、妻が30歳未満の場合、5年間しか支給されないと聞きました。30歳以上ならずっと受け取れるのかと思いますが、30歳を境目にずいぶんな差があることに驚きました。なぜこんなことになっているのでしょうか。

夫の死亡時に、残された妻が30歳未満で子どもがいない場合、遺族厚生年金は5年間の有期年金になります。子どもがなく若齢であれば、自ら働いて所得が得られるとの考えから(いかにも古典的な就労観ではありますが)、このような取扱いになっています。

5年間の有期年金に

公的年金の特徴の一つは、老齢年金も障害年金も遺族年金も、基本的に終身年金であることです。併給調整により3つの年金のいずれかが他のものに振り替わることなどはありますが、原則として終身にわたって年金を受給できます。

ただし、遺族年金は再婚したり、一定の年齢に達した場合などに打ち切られることはあります。そのほかに、遺族厚生年金は例外的にはじめから5年間の有期年金になることがあります。

具体的には、夫死亡時に30歳未満の場合で、子(18歳到達後最初の年度末までの間にある子か20歳未満の一定の障害状態にある子)がいるかいないかによって次のようになっています(夫死亡時に30歳以上であれば子の有無にかかわらず、再婚した場合などを除き終身にわたり支給されます)。

なお、以下の取扱いは、寡婦だけが対象であり、妻が死亡して夫が残された場合は関係ありません(遺族厚生年金が支給されるのであれば、原則的に終身受け取れます)。

1.子がいない場合
例外なく夫死亡時から5年間の有期年金となります。

2.子がいる場合
残された妻が遺族基礎年金失権時に30歳未満であれば、その時点から5年間の有期年金になります。遺族基礎年金失権時に30歳以上であれば原則として終身受け取れます(さらに40歳以上であれば、前号で説明したとおり、中高齢寡婦加算も付きます)。

子がいても……

子がいる場合、残された妻には遺族厚生年金に加え、遺族基礎年金が支給されます。その遺族基礎年金が支給されなくなった(=失権した)時点で、妻が30歳未満であれば、遺族厚生年金はやはり(その時点から)5年間の有期年金になるということです。

遺族基礎年金が失権するのは、たとえば、子が18歳到達年度末(一般的には高校卒業時)を過ぎたときです。ただ、その時点で妻(母親)が30歳未満ということは連れ子の場合などを除けば考えられません。

遺族基礎年金が失権するケースとしては、子が年齢要件を外れた場合以外にも、たとえば子が死亡した場合などがあります。遺族基礎年金支給の対象になっていた子が死亡したとき、妻(母親)が30歳未満であれば、遺族厚生年金は5年間の有期年期になるということです。この場合も、子がなくまだ若いのだから就労しなさい、ということのようです。

Profile

武田祐介

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
ファイナンシャル・プランナーの教育研修、教材作成、書籍編集の業務に長く従事し、2008年独立。武田祐介社会保険労務士事務所所長。生命保険各社で年金やFP受験対策の研修、セミナーの講師を務めている。

公式HP https://www.officetakeda.jp/

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