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Web magazine“Present” 広報誌「Present」Web版

2023年9月号掲載

厚生年金の保険料はどう決まる?

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給与明細をみると、保険料や税金などさまざまなものが天引きされています。なかでも厚生年金保険料は、他の保険料や税金に比べて、格段に高額です。保険料はどのように計算されているのでしょうか。

厚生年金保険料は、給与の額を一定の範囲ごとに段階的に決められた標準報酬月額に置き換えて、その標準報酬月額に18.3%の保険料率をかけて計算されています。その保険料を従業員本人と会社で折半し、本人分が毎月の給与から差し引かれています。

毎年9月分から変更

厚生年金の保険料率は18.3%と法律で決められています(毎年度変わるわけではありません)。この率を給与額に乗じて保険料を計算するのですが、給与額そのものに乗じるのではなく、標準報酬月額という切りのいい数値に置き換えて計算します。

たとえば、実際の給与額が23万円以上25万円未満の範囲にあれば、24万円が標準報酬月額となり、保険料はこの24万円に18.3%を乗じた4万3920円になります。これを労使で折半しますので、本人負担分は2万1960円です。言い換えると18.3%の半分の9.15%が本人負担分となりますので、たしかに大きな負担といえます。

この標準報酬月額は毎月の給与ごとに決まるのではなく、毎年4月から6月までの3ヵ月の給与の平均額をもとに決定され、原則としてその年の9月分の保険料から1年間、適用されます。9月分の保険料は通常10月支給の給与から控除されますので、4月に昇給した人は、標準報酬月額がアップすれば、10月から保険料の負担が増えることになります。

健康保険料も同様に標準報酬月額に保険料率を乗じて計算されています。保険料率は、協会けんぽでは都道府県ごとに異なり、また健康保険組合ではそれぞれ独自に決められていますが、おおむね10%前後(こちらは年度により変わることがあります)で、それをやはり原則労使折半で負担します。

一方、雇用保険料は毎月の実際の給与額に保険料率を乗じて計算されています。その率は、本人負担分は建設業など一部の事業を除き0.6%(2023年度)です。

税金とはベースが異なる

このように、社会保険料が基本的には給与の額(ちなみにボーナスにもかかります)に保険料率を乗じて計算されるのに対し、税金は、支給される給与の額そのものに税率をかけて計算されるわけではなく、給与収入からさまざまな所得控除額などを差し引いた後の額をもとに計算されます。

所得税の税率は所得に応じて5~45%で表面上は厚生年金の保険料率より高いこともあるのですが、ベースとなる金額は給与額よりも小さいので、単に率だけを比較して負担の大小を論じても意味がありません(なお、所得税は、毎月の給与から源泉されますが、これはその年に見込まれる課税所得をもとにした概算額であり、最終的には年末調整で精算されます)。

住民税の税率は一律10%で、これは前年の所得に対して計算された額が毎月の給与から天引きされています。住民税も給与の額そのものにかかるのではなく、さまざまな控除があり、それを引いた後の額に10%の税率を乗じて計算されています。

このように、率の大小だけでなく、社会保険料と税金では、率を乗じるベースとなる金額が異なることも、社会保険料が高い理由といえます。

Profile

武田祐介

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
ファイナンシャル・プランナーの教育研修、教材作成、書籍編集の業務に長く従事し、2008年独立。武田祐介社会保険労務士事務所所長。生命保険各社で年金やFP受験対策の研修、セミナーの講師を務めている。

公式HP https://www.officetakeda.jp/

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