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Web magazine“Present” 広報誌「Present」Web版

2021年4月号掲載

優遇される退職金(前編)

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多額の控除と「2分の1」

A 今回は退職金を取り上げよう。退職金にも所得税や住民税がかかるけれど、給与にかかる税金と比べ、退職金にかかる税金は極めて少なく抑えられている。退職金は課税上非常に優遇されているんだ。

B 税率が低くなっているんですか?

A 特別に低い税率が設定されているわけではないけれど、結果として、税率が低くなる可能性が高い。そのほかにも優遇されている点がある。まず、税金の計算上、差し引くことができる控除額、すなわち退職所得控除がかなり多く設定されているんだ。

B 退職所得控除額はどれくらいなんですか。

A 表に計算式と具体的な金額を示したよ。退職所得控除額は勤続年数に応じて決められる。長く勤務するほど、控除額が大きくなる仕組みだ。

B 長く勤めていれば退職金が多くなるから、控除額も多いということですか。

A それはそうなんだが、計算式をよくみると、勤続20年を境目に控除額がより増えるようになっていることがわかる。すなわち、勤続20年目までは1年につき40万円を年数分積み上げた額が控除額になる。これに対し21年目以降は1年当たりの増加額は70万円になる。

B 勤続20年だと「40万円×20年」で800万円、その後も勤務を続けていれば、毎年70万円ずつ控除額が増えるということですね。40年勤続なら2200万円で20年勤続の倍以上になっていますね。

A そう、20年を境に、年数に比例した以上に増えるということなんだ。

B かりに40年勤務して退職金が2200万円以下であれば税金がかからないということですか。

A そのとおりだよ。もし、2200万円を超えていたら、2200万円の控除額を引いて残った金額が課税対象になるわけだが、さらにこの金額を2分の1にすることになっている。つまり、2200万円を引いた後の金額の半分が税額計算のベースになる。これが2つ目の優遇だ。かりに勤続40年、退職金の支給額が2500万円なら、2200万円の退職所得控除を引いた300万円の2分の1、つまり150万円に税率をかけて税金が計算される。

B 2500万円の退職金が、税金計算上は150万円になるということですか。

A そういってもいいだろうね。

給与と比較すると……

B 税率はどうなっていますか。

A 退職金は分離課税とされている。分離課税というのは、他の所得とは合算しないで、その所得だけに税率をかけて税金を計算する方法だ。他のほとんどの所得――給与所得も含めて――は、総合課税といって、すべての所得を合算して税金を計算することになっている。所得税の税率はベースになる課税所得が多ければ多いほど税率が高くなる超過累進税率なので、分離課税の場合は、他の所得と合算しないから、低い税率で済む可能性が高い。たとえば、先ほどの例で2分の1した後の150万円に対する税率は5%だ。これがもし、分離課税ではなく総合課税なら、給与所得などと合算されて高い税率が適用されることになる。

B なるほど。ちょっとよくわからないところもありますが、給与よりも低い税率になるということですね。

A 金額によっては必ずしもそうではないかもしれないが、低い税率で済む可能性が高いとはいえるよ。給与の場合は、そもそも控除額――給与所得控除――も退職金に比べて少ない。給与所得控除は最高でも195万円だ。だから、かりに年収2500万円でも195万円しか引けない。

B 退職金なら2200万円引けるのに……。

A さらに、給与の場合は2分の1にすることもできない。だから、2500万円から195万円を引いた2305万円が課税対象金額となる。

B 退職金の150万円とは大違いですね。

A その分、税率も違ってくるから、同じ金額の給与と退職金では、税額は大きく違ってくるわけだよ。

(次号に続きます)

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