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Web magazine“Present” 広報誌「Present」Web版

2022年8月号掲載

損益通算の例外と「例外の例外」

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他の黒字の所得から差し引くこと、すなわち損益通算ができるのは、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の4つに限られる。ただし、これら4つの所得の赤字であっても、例外的に損益通算できないものがある。

不動産と株式の損失は不可

A 前回、損益通算できるのは、不動産所得や譲渡所得など4つの所得でマイナスが生じた場合に限られることを説明した。

B そのほかの所得、たとえば一時所得 —— 保険の解約による所得など —— が赤字になっても他の所得からは差し引けないということでしたね。

A そのとおりなんだけど、じつは4つの所得 —— 不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の赤字であっても損益通算できないものがあるんだ。いわば例外、ということだよ。

B 具体的にどのようなものが例外なのですか。

A いろいろあるけれど、とくに譲渡所得には、損失が出ても損益通算の対象外とされているものが多い。まず、不動産と株式の譲渡による損失は損益通算できない。

B 土地や株を売って損が出ても、他の所得から差し引けない……。

A そういうことだよ。土地だけじゃなくて家屋を売って損失がでたときも対象外だし、株式だけでなく、投資信託などの損も対象外だ。

B そのほかにも損益通算できない例外があるんですか。

A 譲渡所得のうち、「生活に通常必要でない動産」を売却した場合の損失も損益通算の対象外になっている。

B 「生活に通常必要でない動産」って何ですか。

A たとえばゴルフ会員権や貴金属、絵画、骨董品などが該当する。これらを売って損が出ても他の所得から差し引くことはできない。

B なるほど……。例外といってもけっこういろいろあるんですね。不動産も株もゴルフ会員権も貴金属もダメということは、逆にいうと、何を売って損した場合に損益通算の対象になるのですか。

A たしかに、不動産や株以外の譲渡で損が出るというのは想像しにくいかもしれないけれど、たとえば個人事業主が事業用の資産、すなわち仕事に使っている機械や自動車などを売って損が出た場合は損益通算できる。事業用の資産を売った場合もその所得は事業所得ではなく譲渡所得に分類され、それがマイナスであれば、事業所得の黒字から差し引くことができる。

B なるほど、そういうケースもあるんですね。個人事業主ではなく、会社員などが個人で所有している自動車を売って損が出た場合も損益通算できるということですか。

A 残念ながらそれはできない。通勤や買い物などに使う自動車などは生活用動産として、かりに売却により譲渡益が出たとしても非課税扱いとなっているんだ。その見合いで、逆に損が出ても損益通算できないことになっている。

B 生活用動産というのは「生活に通常必要でない動産」ではないですよね。そうなると、生活に必要な動産であっても必要でない動産であっても、個人の場合は対象外、例外のほうが圧倒的に多くて、譲渡所得で損益通算できるケースはほとんどないということですかね。

株の譲渡損と配当の組合せに限って……

A じつは「例外の例外」もある。不動産の譲渡損は、譲渡所得ではあるけど例外として損益通算できないが、自宅を売却して損が出た場合は、例外の例外として、一定の要件を満たせば損益通算の対象になる。

B 自宅は優遇されている、ということですか。

A そう、マイホームを売却して損が出た場合は税金上、救済されるということだろうね。ちなみに別荘を売って損が出ても、それは「例外の例外」には該当せず、損益通算の対象外だ。もうひとつの「例外の例外」は株式の譲渡損に関するものだ。

B 具体的には?

A 上場株式の譲渡損は上場株式の配当による配当所得のプラスとは損益通算できる。給与所得などとは通算できないが、上場株の配当所得との組合せに限って損益通算が可能とされているんだ。株を所有していれば、通常、その配当所得はプラスになる。一方で株式の売却損が出た場合は配当所得から差し引くことができるので、結果として配当にかかる税金が少なくて済むことになる。これはいわば株式投資を促すための優遇措置といえるよ。

譲渡所得の損益通算の例外
(損益通算できないもの)

●不動産の譲渡による損失
〈例外の例外〉マイホームの譲渡損失は一定の要件の下、損益通算できる。
●株式等の譲渡による損失
〈例外の例外〉上場株式等の譲渡損失は上場株式等の配当所得との組合せに限って損益通算できる。
●生活に通常必要でない動産(ゴルフ会員権、貴金属など)の譲渡による損失
●生活用動産の譲渡による損失(非課税所得の計算上生じた損失)

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