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Web magazine“Present” 広報誌「Present」Web版

2023年5月号掲載

延長された贈与税の特例

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2023年度税制改正では、生前贈与の取扱いが大きく変わるとともに、教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税特例の適用期限が延長された。一方で、これらの特例には課税強化となる微妙な変更が施されている。

廃止も検討されたが

A 表(下表参照)に示した贈与税の非課税の特例のうち、教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与の特例は、適用期限がいずれも2023年12月31日となっていたが、2023年度の税制改正で、教育資金は3年、結婚・子育て資金は2年延長された。

贈与税の非課税の特例

住宅取得等資金 教育資金 結婚・子育て資金
対象 贈与者 受贈者の直系尊属(父母や祖父母)
受贈者 18歳以上
(贈与を受けた年の1月1日時点で)
30歳未満
(専用口座を開設した時点で)
18歳以上50歳未満
(専用口座を開設した時点で)
非課税
限度額
省エネ等住宅:1,000万円
それ以外の住宅:500万円
1,500万円 1,000万円
おもな
適用要件
  • 受贈者の合計所得金額が原則として2,000万円以下
  • 家屋の面積が40㎡以上240㎡以下
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに建築、取得し居住すること
  • 受贈者の合計所得金額が1,000万円以下
  • 手続き
  • 翌年3月15日までに特例を適用する旨を記載した申告書の提出が必要(贈与税がゼロの場合も必要)
  • 金融機関に専用の口座を開設し、贈与する金銭を預ける
    (非課税申告書は金融機関を経由して提出)
  • 資金を支払ったり引き出したりする場合は、その都度領収書等を金融機関に提出する(使途が確認される)
  • 生前贈与
    加算等
    非課税限度額までの金額は加算不要
    (暦年課税=相続開始前3年以内であっても不要、相続時精算課税とも)
  • 相続開始までの年数にかかわらず、残高があれば加算の対象。ただし、贈与者死亡日において受贈者が23歳未満である場合等は加算対象外(2023年4月以降の贈与については、相続税の課税価格が5億円超の場合を除く)
  • 受贈者が30歳に達したときに残高がある場合は、その年に残高の贈与があったとみなされ贈与税の対象になる
  • 相続開始までの年数にかからず、残高があれば加算の対象
  • 受贈者が50歳に達したときに残高がある場合は、その年に残高の贈与があったとみなされ贈与税の対象になる
  • 適用期限 2023年12月31日 2026年12月31日 2025年12月31日

    B 孫などに教育資金や結婚・子育て資金を贈与しても一定額まで非課税になる特例ですね。改正後の適用期限が1年ずれているのは何か意味がありますか?

    A なぜ、教育資金のほうが1年長いのかはよくわからないけど、結婚・子育て資金の特例は、利用者が少ないこともあって、延長せず2023年いっぱいで廃止することも検討されていたんだ。それでも最終的には延長されたけど、そんなこともあって1年のずれが生じたのかもしれないね。

    B 住宅取得等資金の非課税の特例は延長されていませんね。2023年12月で終了ということでしょうか。

    A 住宅取得等資金の特例は他の2つより古くからあるもので、これまでも何回か延長されているから、次の2024年度の税制改正で延長される可能性はあるんじゃないかな。前回も、2021年末までの適用期限が2022年度の税制改正で2年延長されているからね。

    B さかのぼって改正される?

    A そういうことだね。贈与税の申告は贈与があった年の翌年3月15日までにすればいいから、2024年度税制改正でも間に合うということだよ。

    資産家に厳しい改正

    B ほかにも2023年度改正で変更された点がありますか?

    A 教育資金の特例では、生前贈与加算の扱いが変更された。贈与者が死亡したときに残高があった場合、原則としてその残高が生前贈与加算の対象になる。ただし、受贈者が23歳未満であったり23歳以上でも学校に通っていれば加算の対象にはならない例外規定がある。改正で、相続財産が5億円を超える場合は、この例外規定が適用されず、無条件で生前贈与加算の対象になった。

    B これは、資産家には厳しいですね。

    A もう1点あって、教育資金の特例は受贈者が30歳になったときに終了するので、その時点で残高があった場合は贈与税の対象になる。その贈与税の計算には、これまでは特例税率といって、直系尊属から贈与を受けた場合の低い税率が適用されていたが、これが一般税率に変更された。結婚・子育て資金の特例でも受贈者が50歳になったときの扱いが同様に改正されている。いずれも、2023年4月以後に教育資金や結婚・子育て資金を贈与した場合に適用されるよ。

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